【作成者:溝田丈史】

本稿では,足関節果部骨折後の治療成績(経過)と予後不良因子について解説する.
・足関節果部骨折症例では,受傷・手術直後から3カ月,3か月から6か月の間で大きく機能スケールが改善し,その後の緩やかな経過を辿る.平均5年経過後でも約20%の症例で成績が不良であることが報告されている.
・予後不良の因子として,性別,喫煙,アルコール,BMI,糖尿病,高血圧,メタボリックシンドローム,術後の合併症,再手術,他部位の外傷歴などが挙げられる.
・疼痛に関しては,術後3カ月以上の疼痛を認めることや術後5年後も残存しているケースが多く存在する.術後の神経障害性疼痛も約20%の症例に認められる.
果部骨折の治療成績
Beckenkampら1)の報告では,足関節果部骨折後の機能回復が以下のような経過をたどることが示されている(図1).
・術後1か月:平均スコア31.9(95%CI: 18.8–45.1)で高度の活動制限を認める.
・術後6か月:平均スコア78.3(95%CI: 70.1–85.6)まで回復する.
・術後24か月:平均スコア86.6(95%CI: 78.2–95.0)で安定するが,完全な機能回復には至らない症例も存在し,高齢者において活動制限が長期化する傾向がある1).
手術群と非手術群では,18カ月の段階では非手術群がアウトカムの点数は高値を示すものの有意差は認めらなかった1).24カ月時点では,いずれも活動制限は残存していたことが報告されている¹⁾.Stufkensら2)による平均5年追跡された報告では,適切な整復・固定後の症例であっても,20.7%が経過不良であったことを示されている.

予後に関連する因子(基礎情報)
足関節果部骨折術後の予後不良因子として,以下の因子が報告されている(表1)3)4).これらの因子はFoot Function Index(FFI)およびShort Musculoskeletal Function Assessment(SMFA)のスコア低下と有意に相関し3(,生活の質に影響を及ぼす4)ことが示されている.

予後に関連する因子(疼痛)
果部骨折術後症例の予後の活動制限およびPatient report Outcome(PRO)に関連する因子として,固定除去直後の疼痛が挙げられる5)6).Vanderkarr ら7)の報告では,術後3か月以上持続する疼痛を30〜40%の症例が経験していることが明らかとなっている.またShahら8)は,足関節果部骨折症例69名(平均50.7歳,Danis-Weber分類 type B:74%,type C:26% )を対象とし,5年間の追跡調査で,全症例の50%が疼痛を有し,45%が腫脹を認め,63%がこわばりを訴えていることを報告している.さらに,Rbiaら9)の報告では,観血的整復固定術後の患者の23%が神経因性疼痛を有し,生活の質の低下と関連することが示されている.神経因性疼痛の有意な予測因子として以下の因子がある.

引用文献
1) Beckenkamp PR, et al. Prognosis of physical functioning following ankle fracture: a systematic review with meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2014;44(11):841-851.
2) Stufkens SA, et al. Long-term outcome after 1822 operatively treated ankle fractures: a systematic review of the literature. Injury. 2011;42(2):119-127.
3) Audet MA, et al. Risk factors for poor patient-reported outcomes following ankle fracture. OTA Int. 2021;4(3):e106.
4) Lorente A, et al. Predictors of patient-reported outcome after surgical treatment of ankle fractures: a systematic review. J Clin Med. 2024;13(4):1123.
5) Hancock MJ, et al:Prediction of outcome after ankle fracture. J Orthop Sports Phys Ther 2005;35(12):786–92
6) Lin CW, et al:Pain and dorsiflexion range of motion predict short- and medium-term activity limitation in people receiving physiotherapy intervention after ankle fracture: an observational study. Aust J Physiother. 2009;55(1):31–7
7) Vanderkarr MF, et al. Persistent pain following ankle fracture surgery: a claims analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2022;23(1):1047.
8) Shah NH, et al. Five-year functional outcome analysis of ankle fractures. Injury. 2007;38(11):1308-1312.
9) Rbia N, et al. Incidence and impact of neuropathic pain in operatively treated ankle fractures. Foot Ankle Int. 2017;38(6):616-622.